会社住所や電話番号を借りられるバーチャルオフィスには、メリットも多い一方で“注意点”も存在します。ここではバーチャルオフィスを利用する前に知っておきたい注意点や、バーチャルオフィスを上手く活用するポイントをご紹介します。さっそくチェックしてみましょう。
バーチャルオフィスにはデメリットやリスクもある?
バーチャルオフィスは低コストで一等地の会社住所と電話番号を借りられる便利なサービスです。事業にかかるコストが低く抑えられる一方で、バーチャルオフィスならではのデメリットやリスクがあることも知っておく必要があります。
どのような点に注意すべきなのか、順に見ていきましょう。
他社と同じ住所を共有するため、信用が問われることも
同じ住所を複数の企業が共有するバーチャルオフィスは、信用を疑われる場合があるということを知っておかねばなりません。クライアントに会社名でネット検索をかけられると、同じ住所の他社が複数ヒットするため、「実在する会社なのか?」という印象を持たれてしまうケースもゼロではないのです。
先方がバーチャルオフィスに対する知識を持っている、もしくは誤解している場合にはこのようなトラブルが起こりやすくなります。
業種によっては開業許認可が下りない
弁護士や司法書士などの一部の士業や、一般派遣業、不動産業などの業種は、開業時に一定の要件を満たす必要があります。そのため、バーチャルオフィスを利用して起業しようとしても、要件を満たせず許認可が下りない可能性が高いでしょう。
融資の審査に落ちる可能性がある
起業する際に融資を受けようとしてバーチャルオフィスの住所で申請をすると、事業の実態がないものとみなされることがあります。融資を受けるために別のレンタルオフィスなどを借りなければならず、思わぬ出費になる場合もあるため要注意です。
稀に法人登記ができないバーチャルオフィスも
近年のバーチャルオフィスでは法人登記が可能なところも多いですが、まれに登記ができないバーチャルオフィスも。知らずに契約したあとで登記ができない、といったことにならぬよう、事前にしっかり調べてから契約を交わしましょう。
バーチャルオフィス利用時に注意すべきこと
バーチャルオフィスを実際に利用する際は、どのような点に気をつければよいのでしょうか?
あとから後悔しないよう、以下の点に気をつけて利用しましょう。
プランの内容によって利用できるサービスが大きく変わる
バーチャルオフィスには複数の料金プランがあり、自分に合うプランを選べるのが魅力です。リーズナブルなプランはごく最低限のみで、便利なサービスは追加オプションとなる場合が多いでしょう。
ただしバーチャルオフィスのサービス内容は、事業者によっても異なります。
同じぐらいの料金でも、事業者Aは「住所と電話番号のみ」、事業者Bは「住所+電話番号+郵便転送サービスがある」……というケースも珍しくありません。さまざまな事業者を比較検討し、自分に合うプランを契約することが重要です。
オプション料金や入会金もしっかりチェックしておく
バーチャルオフィスには郵便物の都度転送サービスや、自分専用のFAX番号が利用できるサービスなど、さまざまなオプションがあります。
オプションの中には数百円から利用できるものもあってリーズナブルに思いがちですが、あれもこれもと追加すると想定外に高額な料金になる場合も。基本料金が安いからといってオプションを次々に追加するのは考え物です。
また、バーチャルオフィスを初めて利用する際には入会金(初期費用)が必要になることが多いです。
入会金は数千円~1万円程度が大半ですが、こちらもコストに含めて判断するようにしましょう。
最低契約期間があるかを確認する
バーチャルオフィス事業者によっては、契約に際して最低契約期間を設けているケースがあります。
こうした事業者の場合、途中で解約したりプラン変更をしたりする際に所定の料金を支払わなければならない場合も。
社会保険に加入する場合は書類保管スペースが必要
バーチャルオフィスを利用した事業で社会保険に加入する場合は「帳簿などの書類を保管する場所があること」が条件となります。この場合は貸ロッカーやキャビネットなどを利用できるバーチャルオフィスを選ぶことが重要です。
有人オフィスと無人オフィスの事業者がある
バーチャルオフィスには有人オフィス型と無人オフィス型の2種類があります。有人オフィスの場合は郵便物の直接受け取りサービスや電話代行サービスなどが利用できるほか、クライアントの訪問があった場合でも対人での応対が可能です。
一方、無人オフィスの場合はスタッフが常駐していないため、郵便物の転送頻度が少なかったり、電話応対サービスが利用できなかったりといったデメリットがあります。
転送頻度が少ない場合、契約書や請求書などの期限付き書類の転送が間に合わない可能性も出てくるでしょう。また、もしクライアントがオフィスに訪ねてきた場合、対応できるスタッフがいないと会社そのもののイメージがダウンする場合もあります。
バーチャルオフィス選びのポイント
前項ではバーチャルオフィスの注意点について解説しましたが、バーチャルオフィス選びのポイントにはどのようなものがあるのでしょうか?
自分にフィットするバーチャルオフィスを選ぶためのポイントを知っておきましょう。
法人登記ができるバーチャルオフィスを選ぶ
バーチャルオフィスを選ぶ際には法人登記の住所として利用できるバーチャルオフィスを選ぶとよいでしょう。
法人登記自体は自宅でも可能ですが、自宅住所を登記住所にしてしまうと情報漏洩によるトラブルが起きる恐れもあります。バーチャルオフィスの住所を登記に使用すると、自宅住所を公開する必要がないので安心です。
都心の一等地にあるバーチャルオフィスを選ぶ
バーチャルオフィスを選ぶときはオフィスの住所にも注目すべきです。東京などの都心一等地にあるバーチャルオフィスを契約すれば、一等地の住所を手に入れることができます。クライアントに「一等地にある会社」というイメージを持ってもらえれば、ビジネスにも良い影響を及ぼす可能性があるでしょう。
法人口座が開設可能なバーチャルオフィスを選ぶ
バーチャルオフィスの中には、銀行と提携して法人口座の開設をサポートしてくれるバーチャルオフィスもあります。こうした事業者を選べば、開設がスムーズにおこなえるでしょう。
料金プランが明快なバーチャルオフィスを選ぶ
バーチャルオフィスでロッカーやキャビネットが利用できると、書類や荷物などを置いておくことができます。
「荷物が置ける」ということは、事業を続けていく中で社会保険に加入する必要が生じた場合に重要な役割を果たします。その理由は、社会保険に加入する際に「会社所在地に帳簿などの書類を保管できる場所があること」が条件となるからです。
自宅でも申請が受理されるケースはありますが、紛失や情報漏洩などのリスクを伴いますのでおすすめはできません。登記住所と同じ場所に保管すれば紛失の心配もありませんし、行政機関からの信用・承認も得やすくなるでしょう。
サポートが必要な方は有人型のバーチャルオフィスを選ぶ
電話の応対や取次ぎ、突然の来訪者の対応を求める方は、有人オフィス型のバーチャルオフィスが向いています。また、スタッフが常駐しているため、郵便物を直接受け取りにいけるのも有人型の特徴です。連絡さえしておけば外出のついでに郵便物を受け取ることもでき、自宅へ転送されるまでのタイムロスを防ぐことができます。
一方、無人型のバーチャルオフィスは最低限の内容(住所と電話番号)を求める人や、郵便転送頻度が低くても支障がない人に向いているでしょう。
貸会議室や面談スペースが備わっているところを選ぶ
営業職や芸能関係など、不特定多数のクライアントと打ち合わせをおこなう機会が多い方は、貸会議室が利用できるバーチャルオフィスが便利です。少人数の場合は面談スペースでも十分対応可能でしょう。
こうした物理的なスペースがあると、会社としてのリアリティが増すため、先方からの印象も良くなります。
また、貸会議室にWi-Fiやプロジェクター、ホワイトボードなどがあらかじめ備わっているところならなお良いでしょう。会議などの準備がスムーズになるうえ、コストの節約にもつながります。
バーチャルオフィスを上手に活用するポイント
バーチャルオフィスをさらにうまく活用するには、どうすればよいのでしょうか。
バーチャルオフィスを利用する“理由”を明確に
クライアントの新規開拓時には、「なぜバーチャルオフィスを利用しているのか」を明確にしておくことが重要です。近年バーチャルオフィスの存在が浸透してきているといえど、クライアントの中にはバーチャルオフィスに対し不安感を抱いている方もいるからです。
「事業にかかる固定費を極力削減し、事業になるべく多くの資金を使いたい」
「事業の基盤を整えるまでバーチャルオフィスを利用し、成長に合わせて拡張していく」
というふうに、バーチャルオフィスを利用している理由と事業の展望とを併せて説明できるようにしておきましょう。
会社イメージ向上のため「電話秘書代行」を活用
クライアントに対し、自社がバーチャルオフィスにあると感じさせたくない場合は、「電話秘書代行サービス」を利用してみるのもよいでしょう。
このサービスが付帯しているプラン(またはオプション)では、オペレーターが契約者の会社名で電話に出てくれます。契約者に取次ぎをしてくれるうえ、電話に出られないときでも連絡をしてもらえるので便利です。
人が応対してくれると先方の印象もアップしやすいですし、自分が多忙なときでもオぺレーターが代わりに電話の要件を聞いて報告してくれるため、手間と時間の節約になります。
電話番号だけを借りることもできる
バーチャルオフィスによっては電話番号をレンタルし、自分の携帯番号等に転送してくれるサービスを提供している場合も。レンタルした電話番号は名刺やWebサイトなどに掲載することもできます。用意される電話番号は事業者によって異なりますが、東京の03から始まる番号、0120・0800などがあります。
独立の準備期間に電話番号だけ借りておき、独立後はバーチャルオフィスに切り替える……といった使い方もできるでしょう。
バーチャルオフィスは注意点を押さえて活用しよう
事業をおこなう上でコストはなるべくかけたくないもの。特にバーチャルオフィスの利用を検討している方にとっては、「利用料金が安いこと」は魅力的に感じる要素でしょう。
かといって安いプランだと、必要なサービスが入っておらず、オプションをたくさん追加して思いのほか高額になることも珍しくありません。
また、法人登記ができない・法人口座が開設できないといったバーチャルオフィスでは、事業拡大や成長などのタイミングで他社に切り替える必要が生じるでしょう。
これからバーチャルオフィスを契約しようとお考えの方は、ご紹介した注意点や選び方のポイントを元に選ぶように心掛けてみてくださいね。